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万葉恋ばな対談

対談参加者

・みずのまいさん(著者)

・ゆのさん(イラストレーター)

・Shohei(DODOWAKA)

・Aya(DODOWAKA)

・司会進行:保田さん(学研・晴れ男)

大雨の予報が、一転、青空で迎えた月曜日の13時20分ごろ、東京品川の学研ビル24階の1室。参加者にサプライズで制作されたプロモーションムービーの上映に続き、『万葉恋ばな』対談始まる。

★皆さんの中高生時代の恋ばなで、今回のお話や『万葉集』の和歌とリンクしたものはありますか?
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みずの:書いた中で実体験が1個あるんですけど、それは墓場まで持っていこうと…(笑)。でも『よ・く・ば・り・バレンタイン』。あれって10代のときよくやらかした失敗です。求めすぎて引かれる…結構、何回もやってたかなぁ…。

ゆの  :私は、小学校のときの好きな男の子が、高校生になってイケメンで現れたってことが1回あったんですけど、『万葉恋ばな』にあるようなロマンティックなシーンにはなりませんでした(笑)

保田  :なかなかね、物語のようないいシーンにはならないですよね~.

Shoheiさんは(いいシーンが)ありそうですね?(笑)

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Shohei:(笑)。僕は「紐解き設けな」の『まぶしすぎた織姫』の主人公の絵斗くんが、気になっている女の子に対して気になってないみたいな態度をとる中学生ならではの男の子さが、リンクしたところがあって。中学生のころ、友達だった女の子に思いを告げられてからお互いに意識しちゃって、しゃべれなくなって。僕はサッカー部でその子はテニス部で、練習中もその子を見て気にしていたのに気にしていないふりをしていて。絵斗くんを昔の自分ぽいなって…。絵斗くんは最後にちゃんと思いを告げるけど、当時の僕は自分からその子に対して行けなかったんで。今だったら行けるなって…(笑)。

絵斗君の思春期の男っぽい感じが、懐かしい自分とリンクしたのを感じました。

保田  :モテたでしょ?

Shohei:(激しく否定)いえいえ!

Aya  :私は、「闇の夜」の『ぼくは朝日を抱きしめたい』。高3の男の子が、進路が決まってないことで好きな彼女に対して一歩引いちゃうお話で。中高生のときって進路は恋の中で悩みとしても大きくて。中学で一緒のバンドだったギターの女の子が、役者を目指す男の子に片思いをしてて、互いに目指すものが違うことでの気持ちの葛藤を、その子から聞いていたんです。『ぼくは朝日を抱きしめたい』はハッピーエンドだけど、その子は失恋しちゃって。それで、みんなでゆずの「サヨナラバス」歌って失恋パーティーをした思い出があります

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みずの:いいですね、失恋パーティー!(笑) 青春を感じます!

★今回のお話の中で、特に気に入ったお話は?

Aya  :「霜の降る夜を」の『冬の夜はふたりで』で、主人公の女の子目線で見ちゃうんですけど、相手の男の子もすごく好感が持てたことが印象に残りました。さらに、このお話が、ふたりがこれからどうなるのかわからないまま終わるので、そこが和歌では、五七五七七の短い中から読む人が想像することとリンクして、このお話を読んだ人たちがそれぞれ、お話のその先を想像できるのが素敵だなと。

保田  :『万葉恋ばな』のお話、それぞれみんな続きが気になりますよね。「この先このふたりはどうなるんだろう? 続き読みたいっ!」って毎回思いながら、いただいた原稿を読んでました(笑)。

Shohei:僕は、「夜眠も寝なくに」の『ぼくを忘れないで』がいちばん好きです。お話の初めは、女の子が男の子に対して強めな印象で、最後は、男の子が男らしくなって帰って来て、その立場が変わる感じがいいなって。強そうな女の子が弱くなる感じがかわいらしいなって。いちばんのお気に入りです。

保田  :「女の子の部分を引き出した」みたいな。

みずの:そうですね。そういうことですね!

ゆの  :私はどれも好きなんですが、特に『しつれんハロウィン』って(挿絵として)描けるところがすごく多くて。(主人公の)女の子が普通で言ったら割とメンヘラよりで…(笑)、読み始めて「ヤバイ!」と思ったんですけど、読み終わってみて「これ気持ちわかるな」って。私は普段はラフ(注) をいっぱい描く方ではないんですけど、これは2・3描かせていただいて…。メンヘラ感マックスのも描きました(笑)。でも全体を通して1枚で表現するとしたらと考えて、今のものを選びました。

(注)ラフ…絵の構図などを決めるため、輪郭のみなど、ざっくりと描いたもの

保田  :では、お話を書いた立場のみずのさん。

自ら書いたものでお気に入りとかって選べたりするんですか。

みずの:(『万葉恋ばな』では)今までできなかったことができたんで、どれも楽しかったです。…なんだろ、すごい癖のある話より、普通の話が、最後までごく普通に書けるっていう方がプロっぽいのかなって(笑)。『あたしだけの宝石』ってぜんぜんたいした話じゃないけど、ちゃんと最後まで書けたなって。ああいう何気ない話っていいなって、書いてて思いました。

保田  :読者も共感しやすい実際にありえる状況ですよね。

みずの:そう、『万葉集』には相手が死んでしまっていたりとか、もう会えなかったりとか、重いテーマのものがあるので、さりげない話っていうのをちりばめたかった。

保田  :あの、僕も言っちゃっていいですか? どうしても言いたくて。僕個人的には…、『抱きしめなければ』。

一同  :あーーーーーーーー!(激しく同意の声)

保田  :あれはもうやばかったです。原稿読んだときに鳥肌が立ちました。で、そのあと、続き(のお話)が来て! 続きのお話の最後にやられましたね。K君だと思ったらOだった。Oやるなぁ!

みずの:K君もいい人なんですけどね。

保田  :(『万葉恋ばな』の)本の全体の構成(お話を載せる順番)は、『抱きしめなければ』と『うそをつけない』をきっかけに決めたんです。

みずの:ホント、ありがとうございます。

★お話の挿絵の中で、特に気に入った挿絵は?

みずの:いっぱいありすぎて1個っていうのが困る…

ゆの  :原作者の方から言われるって初めてなので緊張します!

みずの:まず1個挙げるとしたら『冬の夜はふたりで』なんですけど、あの女の子の表情がすごく絶妙で。ちょっとぎこちないんですよ、まだ。あれがすごい初恋だなって。あと、『フローズンらぶ』の女の子の顔。「ここで閉じたんだな彼女は。永遠に、自分の気持ちを」って。全体に特に女の子ひとりの挿絵が、「こうだったんだな」ってバシッときたというか、感動しました。(私が書いたイメージを)さらに深くしてくれました。ありがたいです。

ゆの  :うれしいです。

Aya  :私は、『うそはつけない』。女の子が泣いている挿絵で、悲しいだけでなく、驚きとか、嬉しさとかがこもった泣き顔で、見てるこっちが「そうだよね!」って言いたくなる挿絵でした。

Shohei:僕は『真菰のかげで』の挿絵がいちばん好きです。場面を想像しながらお話を読むんですけど、最後に挿絵が登場した瞬間に、僕のイメージとぴったり過ぎて、全身がゾワッときて。ここで取り上げられた和歌は、少しエロティックな内容なんですけど、それがお話でも挿絵でも描かれていて、最後、挿絵でお話がキュッとしまった感じがして、好きです。

保田  :このお話の歌「マコモカル」の作詞Shoheiさんですよね。

保田  :では、あえて(挿絵を描いた)ご本人に…。

ゆの  :みずのさんの文章が、女の子を表現するときに「女の子と少女の間のメーター」が結構細切れで、そこを微調整するのが楽しかったという意味で、『真菰のかげで』はここ数年でいちばんかわいく描けました(笑)。うまくこの人を描けたんじゃないかなというのは『王女さまのファーストキス』。あれは女の子が海外の子なので、日本の女の子よりませていて、少女よりちょっと大人っぽいラインまできているんですよね。その子の「決意ができている」顔が描きたくて、ラフを描いた時点で「めっちゃうまく描けた!」って。

保田  :また、僕が…(笑)。今出たのもみんな好きなんですが、『雪の音』もすっごい好きです。これは(僕の提案でなく)ゆのさんにイメージを出していただいた挿絵で。これだけお話の文字で書かれている部分ではなく、行間を描いていて、そこがすごく良いです。

★オリジナルソングの中で、特に気に入った楽曲は?

ゆの  :Ayaさんの歌だったら『フローズンらぶ』の「知らえぬ恋」。Shoheiさんの歌なら『ぼくは朝日を抱きしめたい』の「闇の夜」。それぞれボイスがバーンと来て、それがすごくキュン、なるほど~ってなるので。現代と違う『万葉集』の言葉遣いが違和感なく、発音がしっかり楽曲に染み込む歌い方をされている印象を受けて、すごく聴きやすいなというのを含めて、その2曲を選びました。大変好きです。

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みずの:Shoheiさんなら『あめあめふれふれ』の「雨つつみ」。デーンときそうな『万葉集』の和歌が、やさしくさらっと聴こえるので。Ayaさんなら『冬の夜はふたりで』の「霜の降る夜を」。(どちらも)『万葉集』という壮大なものをやさしくふわっと歌えるって、声のいいおふたりじゃないとできないなって。あと、最初、おふたりの歌を聴きながら(お話を)書いていたんですけど、聴いているうちに何を書いてもこのふたりの声だったら大丈夫だなって安心しちゃって、だんだん甘えてました。ゆだねていたというか頼っていたというか(笑)。

Shohei:聴きながら書いてくださったというのは初めて聞きました。うれしいです。

保田  :すでにできていた歌は先にお渡しして、聴きながらお話もイラストも書いていただいてましたね。では、(歌っている)おふたりは…?

Aya  :『冬の夜はふたりで』の「霜の降る夜を」。1番と2番のAメロとBメロに現代詞を付けた曲なんですけど、冬って、バラードを聴いてみたりとかセンチメンタルになりがちなイメージがあったんですけど、冬の曲なんだけど明るい…。

みずの:ときめく冬ソングですよね

Aya  :近いようで近くないふたりっていうのが、冬の曲だけどちょっとワクワクする、冬がワクワクするような曲かなと思って、お気に入りです。

Shohei:僕は「アラレタバシル」と「下よし恋ひば」で、この2曲は聴きながらからだが揺れてしまう、ライブがイメージしやすいという意味で好きです。あともう1つ挙げるなら「忘れかねつも」。これは僕がDODOWAKAとして初めて作詞作曲をさせていただいたので、思い入れもあるし、最初にこの和歌を見つけたとき、「忘れかねつも」というフレーズにビビッときて、そこから曲も止まらなくて。好きです、はい。

保田  :「忘れかねつも」は、この歌とお話『抱きしめなければ』とイラストの3つがガッツリ組み合わさっていますね。キターっ、めっちゃ泣けるわって。ちなみに僕は…、「マコモカル」と「しくしくも」。
みずの:「しくしくも」のとき、保田さんから興奮したすごいテンションのメールが送られてきました(笑)。

保田 :もう、理想通りの曲が届いて大興奮してました(笑)! あれは歌よりお話が先なんです。『万葉集』の和歌(真木の上に 降り置ける雪の しくしくも 思ほゆるかも さ夜問へ我が背)を見て、これはめっちゃ切ない歌が欲しいと思って。globeのDEPARTURESみたいな。みずのさんには最初から「DEPARTURESイメージしてお話書いてください!」ってお願いしてたんです。僕が先走ってました(笑)。

★今回取り上げた『万葉集』の中で、特に気に入った和歌、あるいは歌人は? これは『万葉集』とのお付き合いが長いおふたりからお願いします。

Aya  :「知らえぬ恋」『フローズンらぶ』の和歌、大伴坂上郎女が詠んだ「夏の野の 繁みに咲ける 姫百合の 知らえぬ恋は 苦しきものそ」です。今、17LIVEで配信している中で「『万葉集』は1300年前の和歌だけどすごい共感できる思いがあるよ」というのを伝えたくてお届けしている「万葉バナシ」でも紹介した和歌です。片思いの切ない感じと、でも気づかれないからと言ってやめるわけにはいかない、そういう思いと、夏の景色も浮かんでくる和歌だなと、景色のイメージと女の子の思いとがどっちも入ってくると思って、一首選ぶとしたらこの和歌かなと思います。

保田  :この和歌は今の子たちも、男女問わず共感できる和歌ですね。

Shohei:僕は「雨つつみ」『あめあめ♡ふれふれ』の和歌、「ひさかたの 雨も降らぬか 雨つつみ 君にたぐひて この日暮らさむ」です。女の子が男の子を帰したくない、雨が降ってくれれば長く一緒にいられる、というお話で、女の子がどうしても自分では「行かないで」って言えないのを、天気にたよっているところが、すごくかわいらしいなという印象を受けて、あらためてこの和歌の意味を考えさせられました。物語を読んでイラストを見て、より好きになった和歌の1つです。

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みずの:私は「闇の夜」、『ぼくは朝日を抱きしめたい』の、防人(注) が詠んだ「闇の夜の 行く先知らず 行く我を 何時来まさむと 問ひし児らはも」です。防人ってすごいなと。電気とかない時代、本当に暗闇を歩いて現地に行くんだなと思うと。命懸けですよ。オオカミとか盗賊とか蛇とか何が出るかわからないし。暗闇の中、道に迷って死ぬかもしれないし、生きて帰れるかわからない。その中で、恋人のことを思う(和歌を詠む)…、すごい人生だなと。

(注)防人…奈良時代の兵役の1つで、主に東国の農民が九州北部に派遣された。往復の費用や食料の支給はなく、赴任中の給料もなく、任期は3年だが延期されることも多かった。

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保田  :好きな人にも、もう二度と会えないかもしれないという覚悟を詠っていて。そこで無邪気に「いつ帰るの?」と聞いてくる女の子のかわいさが切ないですね…。

Shohei:(防人は)自分のことで精いっぱいのはずなのに、ちゃんと大切な人を想像できるって、とても大変そうだけど、素敵だなって思います。

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ゆの  :私は「恋ひ恋ひて」『よ・く・ば・り・バレンタイン』の「恋ひ恋ひて 逢える時だに 愛しき 言尽くしてよ 長くと思はば」です。ラインとか、通話とか、やり取りがすぐできて、会おうと思えばすぐ会える現代ではあまり生まれないのではという内容だと思います。逢えないからこそつづった和歌で、こういった重さはこの時代じゃないと出ない(詠まれない)というところからこの和歌がいちばん好きです。あらためて(『万葉集』を)見てみて、恋愛の感情って、今も昔もこんなに変わらないんだなと思ったんですけど、この和歌で詠われている恋愛は1300年前の人々ならではの恋愛だなと思いました。

保田  :僕は少し違った解釈をしていて、この和歌を詠んだ大伴坂上郎女が「こいつ、悪い女だな」って(笑)。「恋ひ恋ひて」が、男を手玉に取るセリフに聞こえるんです。多分、そこは女性と男性の受け取り方の違いだと思うんですけど。

Shohei:僕も強い女性だと思います。

保田  :そうそう、すごい恋愛上手で、男性に対し「言葉をいっぱいかけてくれないと、ほかの男のところ行っちゃうわよ」みたいな感じで。「来むと言ふも~」って遊び要素たっぷりの恋の和歌も詠んでるし、恋多き女というか、恋愛経験が相当豊富なんだなと思いました。

ゆの  :過去に何があったんですか?(笑)

保田  :けっこう裏切られたり…(笑)。

★みずのさん、ゆのさんのおふたりは、『万葉恋ばな』に関わる前の『万葉集』に対するイメージはどのようなものでしたか? また、関わってからのイメージの変化は?

みずの:(『万葉集』に)こんなに植物が多いって知らなかった。恋のアイテムって、今だとスマホ、クリスマス、バレンタイン、プレゼントとかいろいろあるけど、…昔は、季節か植物の2つだったのかなと思いました。植物って昔からあるものだから、今自分がたまたま見ている草花は、ずーっと昔からあるっていうことを改めて考えるきっかけになりました。植物はお話に落とし込むうえでも、とても役に立ちました。

ゆの  :私は学生時代も含めて(『万葉集』を)読み込めてなかったんですけど、お仕事をお受けしてから、昔に学んだこと思い出しつつ調べてみたら、意外とすごくすんなり読みやすいんだなと思いました。このお仕事の前後でイメージが変わるというより「こんなにすっと入ってくる作品があるんだな」という、新しい発見でした。

保田 :DODOWAKAのおふたりはどうですか?

Aya  :私は、中学高校の古典の授業で『万葉集』は名前しか聞いたことがなくて、「日本でいちばん古い和歌集」ぐらいしかイメージがなく、授業の中でも『万葉集』の和歌はやらなかったし、高貴なというか、品を大切にするイメージがあったので、古典の授業も得意でなく、眠くなっちゃうタイプでした(笑)。でもDODOWAKAとして活動して、曲を通して和歌を1首1首知っていくうちに、イメージよりも赤裸々な和歌が多い、飾らず赤裸々な思いを詠んだ和歌が多いからこそ、読む側も見る側も共感できるんだろうなというイメージに変わりました。

保田  :「紐解き設けな」って、現代語で言ったら(赤裸々すぎて)ヤバイ、なかなか言えないですよね(笑)。

Shohei:僕もみなさんと同じで(『万葉集』は)「学校で習ったっけな?」というイメージで(笑)。どことなく「日本の文化」というイメージはあったけど、これからDODOWAKAに出会って『万葉集』を知ってもらう方々みたいに、僕も音楽を通して『万葉集』に触れました。さっきAyaも言ってましたが、ストレートな和歌が多くて、「マコモカル」の和歌もそうだし、ナンパや不倫、BLの和歌もあることに気づいて、そういう面白さにもどんどん興味がわいてきました。今は「日本最古のJポップ」と解釈して、これから曲を作るにあたって探したりして、新しく出会う和歌たちが楽しみですね。

<編集部からみずのさんへの質問>

★『万葉集』の和歌の世界観、DODOWAKAの楽曲のイメージとリンクしたお話を作るという、今回のお仕事はいかがでしたか?(楽しかったこと、いつもと勝手が違って苦労したことなど)

みずの:作家を11年くらいやっているんですけど、(今回のお仕事を)今までがんばってきたことのご褒美くらいに思ってます。何故かというと、これまではずっとシリーズ物をやってて、これはひとりの主人公がひとりの男の子を好きになる話が1巻2巻3巻…と続くので、世界観が決まっちゃうんです。途中で違う雰囲気の恋を描きたいと思っても…。たとえば、サザエさんなら、サザエさんはずっとマスオさんを好きでないと(笑)、くるってきちゃうじゃないですか。(シリーズ物は)続ければ続けるほど、ところどころにできなかったこととか、諦めたこととかあったんです。このお仕事をいただいたときに、どんどん書けたことで、できなかったことや諦めたことがこんなに沢山あったんだなって分って、(そういう意味で)今までの作家人生でのご褒美お仕事でした。あと、シリーズってひとりで全部背負うけど、(『万葉恋ばな』は)歌もあって聴いてもイメージできる、『万葉集』もある、イラストもある、手伝ってくれるものが沢山あるから、本当にいいお仕事をいただけてよかったなって気がします。

保田  :すごいうれしいです。ありがとうございます。泣きそうです。

みずの:最初、保田さんが(『万葉恋ばな』の)コンセプトを送ってきたときに、素晴らしい企画だなって純粋に思ったんです。「児童書」というマニアックな世界の話になりますが、今「児童書」というジャンルの中で初恋の本がすごい量になっていて。私がデビューした2010年は、ほとんどなかったんです。私は初恋の話でデビューしたので敵がいないから結構うまくいって。当時は、漫画はいいんだけど、恋の物語で小学5・6年生の気持ちを引っ張るのは下品と見られていたんです。2015年ぐらいから本屋に(小学生の初恋の話が)出始めて、2021年の今は、本屋には腐るほど(笑)、もう初恋の話以外売れないんじゃないかって嘆く編集者もいるほどで。この飽和な時代に、『万葉集』を使って、ミュージシャンもいるこの企画を読んだときに運が巡ってきたな! と、物語20本全部、私が書きます! って。

保田  :この企画自体は2017年に海老原さんからお話をいただき、DODOWAKAの曲も聴かせていただいて…。何とかこれを形にしたいと思いながら、何度も企画を出していたんですが、なかなか通らなかったんです。

海老原:保田さんの4年の頑張りですよ。

一同  :おお!

(注)海老原…DODOWAKAのプロデューサー。(株)BARZHOUSE代表/万葉集EDMの発案者

★特にDODOWAKAの楽曲とのリンクを意識して作ったお話があったら教えてください。

みずの:みんな結構意識していて…。「マコモカル」の『真菰のかげで』、「紐解きまけな」の『まぶしすぎた織姫』、「しくしくも」の『雪の音』、「来むとは待たじ」の『しつれんハロウィン』など、(この仕事の)前半に書いたものは結構意識していました。後半になると、さっきお話ししたように、このおふたり(Ayaさん、Shoheiさん)の声だったら何を書いても(大丈夫)と、甘えてしまいましたね(笑)。「闇の夜」の男性ボーカルの力強さとか、「来むとは待たじ」の軽やかな感じなどは、お話に絶対出したいなと思って書きました。湿っぽい話とか、ちょっとドロッとした話も、Ayaさんの歌声が最後に流れたらあんまり湿っぽくならないとか、Shoheiさんの声ならやさしく包んでくれるなとか、聴きながら甘えていました。途中からより自由に書いていました。

<編集部からゆのさんへの質問>

★それぞれの物語の挿絵を描く際に意識したことは? 今回のお仕事をやってみていかがでしたか?

ゆの  :意識したことは、あんまり今時の絵(今よくあるテイストの絵)にしたくなかったことです。それより、元には『万葉集』があり、そこから現代の物語がつくられ、さらにそこに曲がついて、という全部合わせたときに違和感ないようにするために『万葉集』のことをしっかり考えなきゃと思いました。でも無理やり「和もの」を入れることはできないので、絵を塗るときに使うブラシを、和紙っぽいテクスチャになるものに統一しました。そうすることで、本を読んでいる人はもちろん、電子書籍で読む人にも「紙感」…紙の本を開いた感じ、紙の印象が伝わるようにと考えました。

描いてて苦労したことはないかな…。そこらじゅう面白かったし、「好きなように描いてください!」とのご依頼だったし(笑)。女子中高生はスッと描けました。ただ、さっきも話に上がったけど、『万葉集』にはいろんな植物が出てきますよね。『抱きしめなければ』で出てくる花の「ヒルガオ」で、検索したらアサガオが出てきたので「ヒルガオとアサガオは同じなんだ」と思って描いたら、違ったんですよね(笑)、花の模様や葉っぱの形も。ちょっと慌てました(笑)。

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<編集部からShoheiさん、Ayaさんへの質問>

★『万葉集』の和歌をオリジナルソングに落とし込んで歌う上で、どんなことを意識してますか? また、オリジナルの歌詞を加える際に意識していることは?

Shohei:ゆのさんがおっしゃってくれたんですが、現代詞が付いている曲は現代詞と『万葉集』の和歌を分離したくないイメージがあり、現代詞は和歌を元に書かせていただいて、双方をつながるように聴いてもらいたいので、歌い方も、聴いている人に「あ、和歌になった」と思わせないように、音と言葉がマッチするようサビの部分は結構意識して歌うようにしています。

保田  :聴いていて『万葉集』の和歌も、今の言葉としてすっと入ってきますよね。

Shohei:僕の解釈では、和歌は、「闇の夜」を詠んだ防人も、二度と会えない恋人を詠んだ和歌も、あふれる思いをぎゅっと(五七五七七に)閉じ込めたんじゃないかと思うんです。それが現代歌詞によって広がっていけばいいなという気持ちも合わせて、内容を深く読み込んで、現代詞を書くように意識しています。現代詞によって、五七五七七からもれてしまった部分を拾えるという意識はあります。

Aya  :私は、『万葉集』の和歌の部分は、1300年前にメロディーをつけて歌われたとしたらどんな風だろうと想像して、自分の想像を裏切らないように歌いたいというのがあります。歌詞では、細かすぎない、誰もが共感できる、細かい描写ではなくて大きな普遍的な内容の歌詞がすごく好きです。それが『万葉集』の和歌にもつながるなって思ってます。『万葉集』の和歌は、五七五七七という短い中に詰め込むからこそ、それを読む人たちはきっと想像するじゃないですか。読む人たちそれぞれが自分のシチュエーションに合わせて想像できることが、いいなと思うことの1つだったので、現代詞を付けるときもその部分は崩さずに聴いてる人が自分に置き換えて想像できるような歌詞を書きたいと思っています。

<締めの全員への質問>

★1300年前の我々のルーツとなる人々に対して、あるいは歌人に対して、今、なにか伝えたいことはありますか? 広く万葉の歌人たち、万葉の人々に対してでも良いですし、歌人個人に対してでも結構です。

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Shohei:1300年たって、環境とか変わっていると思うんですけど人は人に恋をしているということと、逆に、みずのさんが書いた現代の恋物語を(1300年前の人たちに)知ってもらいたい、そうしたらどんな反応をするのかなと気になります。「今こんな感じでーす」という風に伝えられたらと思います。

Aya  :大伴坂上郎女の和歌が好きで、ラブソングの女王だと思ってます(笑)。自分の思いを歌うだけじゃなくて、和歌の主人公の女の子がかわいく、魅力的に見えるように歌うのが上手だなと。なので、大伴坂上郎女と恋ばなをしたいなって思います。

保田  :お~! 止まらなそうですね。

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みずの:私は、『万葉集』をつくった人たちに感謝をしてます。恋をテーマにした文化的なものって『万葉集』が日本最古ですよね。『万葉集』の存在が音楽でも文の世界でもかなり大きな存在で、ひょっとしたら日本人の基礎になっていたのかなと思うと、基本中の基本をこれで勉強させてもらったというのもあるし、『万葉集』がなかったら日本の文化形態は今と違っていたのかなと思うんです。私が子供のころ月9(月曜9時のドラマ)というのがあって、ラブストーリーがいっぱいの、あれ基本全部『万葉集』だなって読みながら思ってたので、日本のすべての恋愛文化のツールは『万葉集』から生まれたんだなって、すごく感謝しています。

ゆの  :私は「長い年月を経ても、1300年を経ても、それを再構築する人たちがいますよ。ありがとうございます。」と伝えたい。

保田  :「ありがとうございます」というのは言いたいですよね。

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★物書きを目指している、イラストレーターを目指している、ミュージシャンを目指している中高生に、皆さんの立場からひと言。アドバイスや応援メッセージをお願いします。

ゆの  :今、中学生や高校生の人たちが、目指しているもののために、勉強したり、見たり、描いたり、書いたり、歌ったりしているものって、大人になっても、残るものなので、目指した職業に就かなかったとしても、それを本気で目指すとしても、今作っているもの、何かを志すために書き出しているもの、アウトプットしているものは捨てたりしない方が絶対いいと思います。ずっと残して、今後も、大人になったときも見返せるぐらいの状態にしておいて欲しいなと思います。自分の作ったものを大事にしてほしい、『万葉集』も1300年残ってるし(笑)。残すことを大事にしてくださいと言いたいですね。

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みずの:物書きを目指している人へ。みんなといる時間と、ひとりの時間の両方があるといいかなと。いろんな感情を知っておいた方がいいので、そのために、いろんな人と交流したり、しょっちゅうネットとかSNSで人と繋がったりしていることも大切だし、それがないとよくないんですけど。ただ、物書きはロンリーな職業なので、ひとりでふと我に返ったときに、意外にみんな違うことを考えていたとか、意外にそのとき何を思うかという、2つの世界を自分の中でもっていると、物書きになりやすいんじゃないかな…。陽キャラ陰キャラ両方ね(笑)。

Aya  :これは音楽だけじゃなくて多分、文章やイラストでも一緒だと思うんですけど、自分の伝えたいことを表現するとかって難しいじゃないですか。けど、私だったら音楽で、たくさんの人に聴いてもらえるチャンスができたり、もしかしたらそれで誰かの心に刺さったら、うれしいので、中学高校って進路とか、もしかしたらいちばん悩むときかなって思うけど、とりあえず、自分の感性に任せてチャレンジっていうのは大事かなって思います。

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Shohei:好きになって熱中して、もっとさらに興味を持って、それがきっと夢になると思うので、今は自分のもっているものを大事にしてもらいたいと思います。僕もまだまだですけど、これから、今までできなかったことが少しずつできるようになってくるという、成功体験をすごく大事にしてもらいたいです。一緒に頑張れたらなと思っています。

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★最後に読者へ『万葉恋ばな』について、メッセージをお願いします。

みずの:私、ちょっと思ったのが、『万葉恋ばな』は読書感想文とか自由研究のための本として、意外にいい本じゃないかな? と。なぜかと言うと、夏休みになると必ず「読書感想文が書けません」や、「自由研究に困っています」という手紙が来るんです。自由研究では、8月20日くらいに質問事項がいっぱい書いてある手紙と、それに返信用封筒と切手が入っているんですよ。さらに25日までに送り返してくださいって(笑)。

一同  :えぇ~っ!

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みずの:読書感想文と自由研究がどれだけ大変なのかなって思うときがあって。読書感想文だったら、文章が得意じゃなくても『万葉恋ばな』なら、歌の力と絵の力とで、感想文が書きやすいと思うんです。自由研究は、『万葉恋ばな』は歌・絵・文と来てるので、もう1つ何か自分で創作するとか、そういうふうに使える気がするんです。ちょうど夏に発売だし、今年の夏、読書感想文や自由研究に困っている子がいたらぜひ、『万葉恋ばな』を活用してね。みんな使ってね(笑)。

保田  :自分なりに『万葉集』の別の和歌を見つけて、それを広げたりとかもできますね。

の  :今回、対象年齢層にしては挿絵を大人っぽく描いたり、甘い感じを出したりしているつもりです。これを読んでいる子には、どんどん恋愛をしてほしいです。これを見て、こういう恋愛があるんだなとか、男の子や女の子の接し方ってこういうのがあるんだなとか、少しでも参考になればなと思っています。

保田  :イラストによってイメージも広がっていきますよね。

ゆの  :少しでも何かのきっかけになればと。恋の勇気を引き出すきっかけになるといいですね。

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Shohei:『万葉恋ばな』を最初から読んでそれぞれ楽曲を聴くというのを、全20話やってみたんです。それで個人的には、最初に物語を読んで、イラスト付きのMVでDODOWAKAを聴いてもらうのがいちばんいいかなと思います。さらにそのあとに、DODOWAKAのイラスト付きのMVを見たくなって見たときでも、じんわり(その前に読んだ)恋物語が残るような感じも受けたので。

あとは、せっかくDODOWAKAを知ってもらう機会になっていると思うので、本を手に取ってくれた方には、今、なかなかライブができない状況でDODOWAKAが17LIVEという配信アプリをやらせていただいているので、そちらも見てもらえたら嬉しいです。内容は、DODOWAKAの楽曲を演奏して歌ったりもしてますし、そのほかの曲のピアノ弾き語りもしてますので。

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Aya  :『万葉恋ばな』を読んで、和歌の世界観と、その世界観を現代のラブストーリーにしたお話と、それを想像できるイラストと、DODOWAKAの曲の世界観を一緒に楽しんでもらえたらいいなと思います。

あと、自分の中学高校時代を思い出したときに、通学の時間って、時間をもてあますけど、何かしたいじゃないですか。そういうときに、ふとした瞬間に聴きたくなる、しかも『万葉恋ばな』の曲はそれぞれに思い出すストーリーがあるので、聴こうと思って聴くのもうれしいけど、日常のなかでふとした瞬間に聴いてもらえるようなそんな曲になれたらいいなと思います。

さっきも話にあったDODOWAKAのメンバー3人がそれぞれ17LIVEでライブ配信をしていて、それも、DODOWAKAの曲をたくさんの方に知っていただきたいというのがあるんですけど。見てくれている人たちに、コロナ禍で今までできていたことができなくなっている日常の中のちょっとの楽しい時間を届けられたらいいなと思ってやってて。私は、配信の中で、『万葉集』と現代の私たちの心とリンクするっていう意味で「万葉バナシ」という時間だったり、ミニライブで歌をお届けしたり、EDMタイムといってDODOWAKAの曲でみんなに歌って踊って楽しんでもらえるような、ライブやフェスに行っている気分にちょっとでもなれるような内容の配信をしているんですけど、だからこの本も含め、日常生活の中の楽しみになってくれたらいいなと思います。

保田  :全部をリンクさせて楽しんでほしいですね。

みずの:そうですね。こんな時代ですし。

保田  :コロナが明けたらイベントやりたいですね。「万葉ナイト」とか!

みずの:いいですね「万葉ナイト」!

保田  :コロナがなければ、まずはこの後、流れで打ち上げなんですが。

ゆの  :保田さんの恋ばなが聞きたい! 何かがあったみたいなんで(笑)。

保田  :じゃあ、対談はこれで終了です(笑)。長々ありがとうございました。

最後までお読みいただきありがとうございました。

当日の対談の約半分を今回掲載しました。

未掲載の分につきましては後日テキストデータを添付予定です。

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